漁業者の皆さんは春から秋にかけてノリ種の培養を行い、夏の終わりには重労働である支柱の立て込みを始めます。そしていよいよ十月中旬からノリ種を採苗して、それから一ヶ月後ノリの摘採、乾海苔の製造と仕事をして行きます。摘採は夜中に行われ、冬の寒いときの仕事です。
このようなノリ養殖のスケジュールですが、佐賀県では県、漁協、漁業者と一枚岩で集団管理体制のもと、日本一おいしい海苔作りと安定生産を目指しています。
ここでは佐賀県の現地機関である有明水産振興センターの仕事を紹介します。
まずスタッフです。 ノリ研究係、資源研究係そして普及係の三つの係に総務課を加えて二十名近くいます。ノリ研究係では、品種開発、病害対策、生産安定技術開発の三本柱で試験研究を行っています。その内容としてはまず選抜育種交雑法によって漁業者ニーズに則した新品種開発の研究です。これまで高い品質性の新佐賀1号(平成八年)、低塩分性品種(平成十一年)、ゆたか(平成十八年)、高水温耐性の新佐賀三号(平成十九年)等奨励品種を開発・普及してきており、現在、高水温耐性の新佐賀四号の品種登録も行っています。最近、開発した「ゆたか」については、広い水温域(二十五℃〜六℃)で生長および品質が良い特徴を持つことが明らかとなっていますので、漁業者に広く使っていただいているところです。 病害対策では、寄生性疾病(カビの仲間)の研究を中心に行っています。その中でノリ養殖に大被害を与えるアカグサレ病は、夏の間どこにいるかわからない病気だったのですが、それを概略解明しました。次のステップとして、いつ発生するかの解明を行っています。これが明らかになれば病害対策へ寄与できると思っています。同じように壺状菌の発生把握技術の確立やスミノリ病の解明と防除に関する研究にも努めています。生産安定技術開発としては、活性処理・栄養塩添加技術の研究です。活性処理は昭和五十年代に作られた技術で、pHの低い溶液にノリ葉体を浸漬して病害対策に使っています。栄養塩添加技術とは、ノリに必要な窒素塩がなくなりますと、黒いノリが色落ちといって商品価値のない黄色い乾海苔になりますので、この窒素塩だけを添加する技術です。 将来的にも重要なこの二つの技術は、省力化、効率化を図り、環境に優しい技術として確立させていこうと考えています。
他には、漁場における水温、塩分、栄養塩等の海況そして赤潮などの環境モニタリングを行って、漁業者へお知らせしています。
いっぽう資源研究係や普及係では、タイラギ、アゲマキ、サルボウなどの貝類を増やす増殖技術開発に力を注いでいますが、ノリ養殖へ寄与するためにも重要な仕事です。 ノリ養殖の色落ちの主な原因は、ノリの栄養源である窒素を食べる珪藻などのプランクトンの増殖ですので、色落ち被害を防ぐためには、これらを減らすしかありません。そこで貝類の登場です。貝類は珪藻を餌に成長しますので、貝類を増やせば間接的にノリ養殖へ貢献できるのです。
ちなみに、タイラギ一個(百g)が一日にろ過する水量すなわち珪藻をろ過する量は約一リットルです。
以上の技術開発は、すぐに漁業者へ還元されることになりますので、そこで普及係が、漁協と連携しながら調査研究結果の普及・指導を行い、ひいては集団管理体制の構築による安定生産に繋げていきます。近年、生産枚数十九億枚以上を堅持していますので、これからもこのレベルを維持できるようにセンター職員一丸となってがんばっています。乞うご期待ください。
佐賀海苔おもしろ読本
発行/新うまい佐賀のりつくり運動推進本部
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平成30年6月発行 (改訂)
協力/佐賀県有明海漁業協同組合
企画/ (株) 電通九州